【2年経過】French Work Jacket 経年変化

 2年前に購入した、デッドストックの“Adolphe Lafont”フレンチワークジャケットの経年変化です。

 主に秋冬を中心に着用し、一番着ている時期は週2~3回着ていたと思います。洗濯回数は通算4回。下にシャツやニットを着ることが多いので、ジーンズのように皮脂汚れが直接つくことはないと思い、1シーズンに1~2回程度の洗いにとどめました。

 

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 洗濯のたびにステッチ部のパッカリングが顕著に出てきています。全体の色はまだあまり落ちていませんが、購入時と比べると表面の光沢感が落ち着いてきた印象です。

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 ボタンはオリジナルのもの(プラスチック)から現行で販売されているブラスボタンに付け替えています。これは50年代ヨーロッパのミリタリーボタンを参考に作られているようで、形のエッジがしっかり造形されていてなかなかかっこよいです。金属ボタンって不自然なアンティーク加工がされていたり、形がシャープでなかったりするものが多いので、現段階ではこのボタンは結構気に入っています。

 無垢のブラスの表面に黒のラッカースプレーを吹いて、なんちゃってラッカーボタンにしています。これも表面が剥がれて味が出てきました。オリジナルのヴィンテージでは、この形のミリタリーボタンでラッカー仕様は見たことないのですが、自分なりの楽しみ方として満足しています。

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いつもバッグはリュックサックなので、肩や背中は他の部分よりもよく色落ちがあります。

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2年でこの程度か、と言いたくなるような経年変化ですが、それだけ生地が堅牢だし、貴重なデッドストックということで自分自身が大事に着ている事もあって、この結果です。

 デニムとは全く違うブルーの発色や、どことなく漂うナードな雰囲気は他では得難いものだと思います。ふらりと出かけて神保町の古本屋をめぐり、買い占めた本を読みながら蕎麦屋で一杯、なんて休日に連れて行きたくなります。

 

youtu.be

関係はないけど、マルジェラのこのビデオが好きです。Adolphe Lafontのジャケットをこのビデオの中に登場させたい。あぁ、パリだ。

プロペラ機

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 久しぶりに投稿します。

 2年ほど前からお世話になっている古道具屋さんで、プロペラ機の残欠を購入しました。大きさは20センチ四方に満たない程度、アルミダイキャスト製と思われる金属部分に、天然木のプロペラがついています。おそらく模型飛行機の部品でしょう。燃料で動く本格的なラジコンがあるのを聞いたことがあります。

 

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 小さくても機械なので、細部の作りもきっちりしています。

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読みにくいですが、プロペラ部にREVーUP/TMYと記載があります。これがメーカー名なんでしょうか。だとしたら昔のタミヤ製なのかな?はっきりしたことは分かりません。
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 反対側のプロペラ。こちらにもなにか書いてあります。

 

 …ともあれ、本来の役目や文脈から切り離されて見られるモノというのはミステリアスで面白い。先入観が排されるとかたちそのものが見えてきます。これなんかは、ちょうど今日訪れた東京国立近代美術館の常設展(特別展は横山大観展。今日は最終日で大盛況でした。)で見たアルベルト・レンガー=パッチュ(Albert Renger-Patzsch,1897ー1966)の写真と近い感覚で眺めたくなります。レンガー=パッチュはノイエ・ザッハリヒカイト(新即物主義)の代表的な写真家です。

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被写体のかたちを、縦長の画面にまるで標本のようにきっちりと収めています。(給水塔シリーズで有名なベッヒャー夫妻は、こうした建築の標本のような撮影手法を、タイポロジー的手法にまで発展させたと言われます。)

 

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 新即物主義については明るくありませんが、一般的にはヨーロッパの第一次大戦後の工業化・大衆化を背景とする美的感覚を反映した一種のリアリズム運動、と理解されています。ちなみに、日本では関東大震災が転機になり大衆化・都市化が進展。その後の1930年台に新興写真運動として新即物主義流入・展開します(こちらは5月6日まで恵比寿の写真美術館で展覧会をしていました)。

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写真家、アウグスト・ザンダーの『20世紀の人間』を例に取ります。この作品は、基本的に「どこの誰か」を示す形式の「肖像写真」であるにもかかわらず、ザンダーはタイトルにおいて個人の名前・年齢を一切明らかにしませんでした。また、画面にきっちり収まった静的な構成は標本のようです。これらの手法によって、ザンダーは「個人性」を剥ぎ取られた匿名の「人」が現前する写真を生み出しました。これは、経済主体の大衆化や、都市への人口集中のなかで、絶えず見知らぬ人とすれ違い、眼差しを交わし続ける同時代の人々の経験に基づいて選び取られた手法だったのでしょう。こうした経験があってはじめて、「人」のかたちそのものを対象とする精神がうまれたのではないでしょうか。

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このプロペラも、その独特なかたちを楽しみたいと思います。即物的に…。

 

French Work Jacket 水通し+乾燥機

さきほど紹介したフレンチワークジャケットだが、水通し+乾燥機をして、いい感じに着られるようになった。

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 まだうっすら折りジワがあるが、これは着ているうちになくなっていくだろう。

 乾燥機までやってわかったことは、やはりいくら目の詰まったモールスキンとはいえ全体的に少し縮むということ。もちろん均等に縮むわけではないのだが、このジャケットの場合は身幅、袖丈なんかははっきり変わったような気がする。デッドストックの状態ではすこし中に着込んでちょうどよい感じだったが、今ではTシャツ一枚でも立体的にからだに生地が沿うようになった。

 

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そして、さらに言うとこの大きくラウンドした襟にも変化があった。デッドストックの状態では比較的ぺたんと「折られている」感じだったのだけど、水通し+乾燥機で立体的なカーブが出るようになったのだ。これはうれしい変化。パッカリングも出始めているね。

 生地も限界まで目が詰まったからか、なんともふしぎなプルプルした弾力が出てきた。この感覚は僕が所有している現行ものの他のモールスキンとは若干違うような感じがする。現行ものはもう少しガサガサ感が目立つ。色落ちが楽しみ。

 

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 あと昨日言い忘れたけど、このポケットの逆さ富士(モンブランマッターホルン?)がいいんすよねー。。色落ちしていくとこの切り替えのところだけ細く、濃く色が残って、まるで隈取りしているみたいな立体感のある表情になるのです。まっすぐの切り替えもあるんですけど、どちらをとるかはもう好みの世界。逆さ富士のほうが若干ごてごてして見えるかも?でも全体的にあっさりめなので、ぼくは逆さ富士のほうを取りました。

 

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あと、結構僕が気にしているのが袖のかたち。古いものだと袖に向かってきゅっと絞り込まれているものが多いのですが、ワークウェアとしてはいいものの、普段着としては少しどんくさい。このタイプのジャケットの裾については、ですが。

 しかし買ったものは裾の絞りも比較的緩く、その辺もクリア。この細くていかにも味気ないカフスのデザインは依然としてあまり好みではないけど、その辺は袖を折り返したりして気分を変えながら着ていきたい。シンプルなだけに、いろいろアレンジ効かせれば見栄えがぐっと良くなるのもこのジャケットのおもしろさです。

 

 さて、ざっとフレンチワークジャケットについて紹介してきたわけだが、本当に使い勝手がよく、気づいたら手に取ってしまう気取らなさが何よりもの魅力。ジーンズとの相性もいいです。特にあまり色落ちしていないものと。その場合はブルーのグラデーションカラ―になるので、白いスニーカーやシャツなんか着てチラ見せすると全体が締まってよいと思う。ロールアップでもいいね。

 そんなわけで、これからも気が向いたときにこのジャケットについてはレポートしていきます。

French Work Jacket

 季節外れもいいところだけども、ヴィンテージのジャケットを買った。いわゆるフレンチワークものの、ブルーのモールスキンジャケットだ。フランス古着の定番で、様々なメーカーが似たようなものを作っている。

 

 ぼくはこのジャケットが大好きで、ワードローブを覗いたところもう4着ほども持っていたことに気付いた。しかし、一着でいいからヴィンテージのものを、しかもデッドストックでほしかったのだ。

 このジャケットの良いところは、とにかくシンプルであること。左右の裾、左胸、右胸裏の計4つのポケットはしっかりとした大きさがあり、Iphoneから定期券からはたまた財布までなんでも入る。身軽な人ならこのジャケットだけで出かけることだって余裕で可能だろう。フラップなんて気の利いたものはないが、その分、気なしにざっくりと手を突っ込んだりするのにも便利だ。

 

そして、(フレンチ)モールスキンという生地の面白さ。コットンツイルもいいのだが、このモールスキンという、がしっとしたサテンのような男前の生地は、着ていくと柔らかに色が落ちていき、最終的には何とも言えない、それこそパリの?青空のようなさわやかさと憂いを合わせたような色になる。もちろん、デニムのように縫い合わせのパッカリングなども如実に出る。新品の状態では微かに光を反射する滑らかな表面を持っていて、それはそれで上品で美しいのだが、やはり着込んでいったときの奥行きのある表情は相当魅力的だ。長く付き合えば付き合うほど魅力が増し手放せなくなる一着。

 

 加えて、この生地はコットンなので洗濯機で気兼ねなく洗え、しかも微妙に起毛しているために空気をその周りにまとい、結構暖かい。ぼくなんかは暑がりなので、12月の東京でもこのジャケットに中はシャツとミリタリ―ニットみたいな感じで普通に出歩いてしまう。おしゃれには季節感が大事なので、ちゃんとしたい人はその上からバルマカーンコートでも羽織りましょう。(という記事を5月に書いている時点でぼくはだめですが。)

 というわけで今回購入の一着。

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製造はAdolphe Lafont。ファンのあいだではLe Mont Saint‐Michelと並ぶ人気メーカーらしく、ちなみにまだ現存するようだ。Le laboureurのように当時のデザインで復刻、オリジナルラインとか作ったら売れそうですね。ただまぁ、すでにHervier Productions S.A.やANATOMICAなど現行では品質の良いものがあるので、ちょっと飽和状態ですね・・・。なにせどこが作っても基本形がほぼ変わらないのがこのジャケットの特徴なので。

サイズは40でかまぼこ型のフラッシャーが付いたデッドストック。色は濃い目のインクブルー。お店の人に年代を聞くの忘れたけど、襟のかたちやポケットのディテールから判断するにたぶん50年代あたりでしょう。

 

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"LES VETEMENTS DE TRAVAIL"、要するに「労働着」、ワークウェアだ。シンプルで的確な主張。下のほうには「上品・安全・丈夫」、ワークウェアなのに上品さが売り文句になるのはお国柄だろうか。

 ここで、なんでワークウェアなのに女性が?と思ったぼくだが、語学のよくできる知人に聞いたところ、横に書いてあるのは女性のセリフで、「私の夫にピッタリだわ!」というようなことらしい。ワークウェアなんて妻に選んでもらったやつ着てるくらいでちょうどいいのかもしれません。この手のジャケットのよく使いこまれたものを見ると丁寧に継ぎや接ぎが施されているのがわかりますが、これをみるとああいうのも夫の破ってきた服を妻が一生懸命なおしたのかなぁ~なんて思ってしまいますね。

 

 ・・・さて、今買ってどうすんだという話ですが、梅雨があけるまでは定期的に着てやろうと思っております。家の中でも気分が向いたら着ようかな。1~2年くらいではわずかな変化しかないとも噂のこのジャケット、それゆえエイジングレポートなどもネット上ではほぼない。だったらせっかくデッドストックを買ったのだし、ぼくがやろうじゃないかと。気が付いたら歯抜けじじいになっているかもしれませんが、「おっ、育ってるねおまえ!」という感じがしたらレポートしたいと思います。

今日水通しして乾燥機にかけたので早速あしたが第二段になるかも。今日撮り忘れた全体写真も含めて数枚アップする予定です。