French Work Jacket

 季節外れもいいところだけども、ヴィンテージのジャケットを買った。いわゆるフレンチワークものの、ブルーのモールスキンジャケットだ。フランス古着の定番で、様々なメーカーが似たようなものを作っている。

 

 ぼくはこのジャケットが大好きで、ワードローブを覗いたところもう4着ほども持っていたことに気付いた。しかし、一着でいいからヴィンテージのものを、しかもデッドストックでほしかったのだ。

 このジャケットの良いところは、とにかくシンプルであること。左右の裾、左胸、右胸裏の計4つのポケットはしっかりとした大きさがあり、Iphoneから定期券からはたまた財布までなんでも入る。身軽な人ならこのジャケットだけで出かけることだって余裕で可能だろう。フラップなんて気の利いたものはないが、その分、気なしにざっくりと手を突っ込んだりするのにも便利だ。

 

そして、(フレンチ)モールスキンという生地の面白さ。コットンツイルもいいのだが、このモールスキンという、がしっとしたサテンのような男前の生地は、着ていくと柔らかに色が落ちていき、最終的には何とも言えない、それこそパリの?青空のようなさわやかさと憂いを合わせたような色になる。もちろん、デニムのように縫い合わせのパッカリングなども如実に出る。新品の状態では微かに光を反射する滑らかな表面を持っていて、それはそれで上品で美しいのだが、やはり着込んでいったときの奥行きのある表情は相当魅力的だ。長く付き合えば付き合うほど魅力が増し手放せなくなる一着。

 

 加えて、この生地はコットンなので洗濯機で気兼ねなく洗え、しかも微妙に起毛しているために空気をその周りにまとい、結構暖かい。ぼくなんかは暑がりなので、12月の東京でもこのジャケットに中はシャツとミリタリ―ニットみたいな感じで普通に出歩いてしまう。おしゃれには季節感が大事なので、ちゃんとしたい人はその上からバルマカーンコートでも羽織りましょう。(という記事を5月に書いている時点でぼくはだめですが。)

 というわけで今回購入の一着。

f:id:amahiko-k:20160601001248j:plain

 

製造はAdolphe Lafont。ファンのあいだではLe Mont Saint‐Michelと並ぶ人気メーカーらしく、ちなみにまだ現存するようだ。Le laboureurのように当時のデザインで復刻、オリジナルラインとか作ったら売れそうですね。ただまぁ、すでにHervier Productions S.A.やANATOMICAなど現行では品質の良いものがあるので、ちょっと飽和状態ですね・・・。なにせどこが作っても基本形がほぼ変わらないのがこのジャケットの特徴なので。

サイズは40でかまぼこ型のフラッシャーが付いたデッドストック。色は濃い目のインクブルー。お店の人に年代を聞くの忘れたけど、襟のかたちやポケットのディテールから判断するにたぶん50年代あたりでしょう。

 

f:id:amahiko-k:20160601001642j:plain

 

"LES VETEMENTS DE TRAVAIL"、要するに「労働着」、ワークウェアだ。シンプルで的確な主張。下のほうには「上品・安全・丈夫」、ワークウェアなのに上品さが売り文句になるのはお国柄だろうか。

 ここで、なんでワークウェアなのに女性が?と思ったぼくだが、語学のよくできる知人に聞いたところ、横に書いてあるのは女性のセリフで、「私の夫にピッタリだわ!」というようなことらしい。ワークウェアなんて妻に選んでもらったやつ着てるくらいでちょうどいいのかもしれません。この手のジャケットのよく使いこまれたものを見ると丁寧に継ぎや接ぎが施されているのがわかりますが、これをみるとああいうのも夫の破ってきた服を妻が一生懸命なおしたのかなぁ~なんて思ってしまいますね。

 

 ・・・さて、今買ってどうすんだという話ですが、梅雨があけるまでは定期的に着てやろうと思っております。家の中でも気分が向いたら着ようかな。1~2年くらいではわずかな変化しかないとも噂のこのジャケット、それゆえエイジングレポートなどもネット上ではほぼない。だったらせっかくデッドストックを買ったのだし、ぼくがやろうじゃないかと。気が付いたら歯抜けじじいになっているかもしれませんが、「おっ、育ってるねおまえ!」という感じがしたらレポートしたいと思います。

今日水通しして乾燥機にかけたので早速あしたが第二段になるかも。今日撮り忘れた全体写真も含めて数枚アップする予定です。